
問い合わせが3倍に増えても、電話はほとんど鳴らなかった
これは、私たちFluxxが運用していた広告で起きたことです。広告のレポートに並ぶ電話の問い合わせが、3か月で3倍に増えました。前月比で見ても、2か月続けて大きく伸びています。数字だけを見れば、出稿がようやく効き始めたと報告したくなる状況でした。
ところが先方の担当者に確認すると、電話はほとんど鳴っていないと言います。運用している私たち自身も、定例の席で営業電話か誤タップではないかと口にしました。増えているのに、誰も喜んでいませんでした。
予算月1万円台の追跡型広告が3か月で3倍を出した
この広告は、ある会社が提携先の事業者を募るために出していたものです。一度サイトを訪れた人を追いかけて表示する追跡型の広告で、予算は月1万円台。成果として数えていたのは、スマートフォンの電話ボタンがタップされた回数でした。
気になったのは数字の大きさよりも、ずれの方向です。増えたはずの反響が、現場の電話機にはほとんど届いていません。どちらかが間違っているとしたら、間違っているのは管理画面のほうだと考えました。レポートの数字と現場の実感がずれたときは、実感のほうを先に信じて調べ始めます。
自社サイトと広告の設定を順番に潰した
原因の候補は、自分たちで直せる側から順に見ていきました。サイトの作り、計測タグ、管理画面の集計設定、広告の入札方式。手前で見つかれば、その場で止められます。
最初に疑ったのは、ページの作りによる誤タップです。指が触れやすい位置に電話リンクがあると、かけるつもりのない人が押してしまいます。スマートフォンの表示を実機で開き、画面上部と下部の追従バーを確認しました。電話リンクはどこにもなく、本文中の番号が自動でリンクになる挙動も切ってありました。
次は計測タグです。サイト上の動きを広告側へ知らせる小さなプログラムで、これが二重に動いていると、1回のタップが2件として数えられます。実際、タグをまとめる入れ物がこのサイトには2つ入っていました。ただ、発火を1タップずつ追えるツールで確認すると、広告側へ成果を送っていたのは1つだけでした。
管理画面側の集計設定も見ました。同じ電話タップを別の名前で二重に登録していれば、件数はそのまま倍になります。登録されていたのは1本だけでした。
最後に、機械学習が入札を自動調整して、成果が出やすい面へ配信を寄せている可能性を考えました。ここで見たのは、管理画面にある2つの列です。「すべてのコンバージョン」には登録した成果がすべて載り、「コンバージョン」には広告主が主要と指定した成果だけが載ります。自動入札は後者を目標に動きます。この電話タップは私たちの設定で副次の扱いにしてあり、「コンバージョン」の列は期間を通して0.00のままでした。この電話タップは、そもそも自動入札の最適化対象になっていませんでした。クリック単価が最安水準で動いていたのも、自動入札が効いていないときの挙動です。
4つを順に見終えました。自分たちの設定に原因は見つかりませんでした。疑う先は自社の外へ移りました。
2日分の分布を見て人が押していると早合点した
この途中で、一度まちがった方向へ進みかけました。手元にあった2日分の時間帯別の件数を見ると、タップは日中に多く、夜は少なめでした。人が起きている時間に押されている。そう読みました。日中は手が離せない仕事の方が、合間に見ているのかもしれないとまで考えました。
月全体を時間帯ごとの割合で集計し直して、考えを引っ込めました。クリックした人が電話ボタンを押した割合は深夜2時台がいちばん高く、夕方17時台の9倍前後です。件数は日中型でも、割合は深夜型でした。営業時間外で電話がつながらない時間ほど、電話ボタンが押されていたことになります。かけたい人が押しているなら、割合は逆を向くはずです。
2日分の件数で、月全体を判断しかけていました。母数を月に広げ、件数を割合に直してから読み直します。
配信先は、広告収入だけを目的にした薄いサイトばかりだった
自社側が白なら、残るのは誰に見せていたかです。配信先の一覧を開きました。追跡型の広告は過去の訪問者を追いかけるので、業種と関係のない面に出ること自体は珍しくありません。気になったのは面の質のほうです。上位を占めていたのはゲームのサイトと、広告収入だけを目的にした中身の薄いサイトでした。
数字の形も人のものではありませんでした。クリック率は10%台後半まで出ています。クリックした人のうち電話ボタンを押した割合は、一部の配信先では半分以上、広告全体でも8%台です。私たちが見ている範囲では、サイトの広告枠に出す通常のディスプレイ広告のクリック率は1%に届かず、そこから電話に進む割合も数%です。クリック率だけで、通常の10倍以上でした。同じページに置いてある問い合わせフォームには、この月は1件も届いていません。

誰が押していたかまでは特定できません。ただ、面の質と、人の範囲を超えた反応率、営業時間外ほど高い割合、この月のフォームの0件を重ねると、人の問い合わせではないと判断できました。機械的なタップか、意図しないタップに予算を払い続けていたことになります。証拠を1つで決めず、4点の重なりで判断しました。
広告を止めて予算を別の媒体に移した
定例でここまでを共有し、この追跡型の出稿は停止しました。浮いた予算は、同じ提携先探しのために新しく立ち上げた別媒体の広告へ移しています。止めるだけなら報告は1行で済みますが、それでは募集そのものが止まってしまいます。
予算が月1万円台だから放置してよい、とはなりませんでした。金額よりも、3倍という数字が実績として社内に残ることのほうが高くつきます。追跡型の広告は提携先探しに効く、という誤った成功例が1つできてしまえば、翌年の予算配分はそこから組まれます。少額の出稿でも、放置すると判断の根拠が汚れます。
調査の副産物として、持ち主の分からない計測タグの入れ物が1本見つかりました。こちらは制作会社に確認を依頼しています。出稿を止めるときに計測タグの棚卸しまで一緒に済ませておくと、次に数字を見るときの疑う先が1つ減ります。
増え方が人の動きとして自然かを先に確かめる
電話がほとんど鳴らなかったのは、押していたのが人の問い合わせではなかったからです。数字が跳ねたときに見る順番は、この一件で手元に残りました。
- 自社サイトに、かけるつもりのないタップを誘う要素がないか
- 計測タグが二重に動いていないか
- 管理画面の集計設定が重複していないか
- 広告の入札方式と、実際の配信先はどうなっているか

手前の3つは自分たちで直せる範囲で、最後の1つは媒体側の話です。近いところから順に潰していくと、見つかった時点ですぐ手が打てます。増えた数字を喜ぶ前に、その増え方が人の行動として自然かを確かめる。この一手間で、価値のない出稿に払い続ける期間が短くなります。
広告は、出す判断よりも止める判断のほうが難しいと感じています。まずは次の定例で、「この件数は何を数えたもので、実際の問い合わせとどこまで一致していますか」と聞いてみてください。その答えを一緒に確かめるところから、私たちFluxxのFluxx Growth Partner(FGP)は関わっています。
広告運用から集客設計、業務の自動化まで
ツール選びから業務設計、自動化の実装まで——
すべて1社で完結できるのが私たちの強みです。




