「いい感じで」が一番高くつく — 発注の仕方を変えると制作が変わる

「いい感じで」が一番高くつく — 発注の仕方を変えると制作が変わる

コスト削減

「いい感じで」から始まる制作は、なぜ遠回りになるのか

いい感じでの構造

「バナー、いい感じで作ってもらえますか」

この言葉、制作の現場で本当によく聞きます。

気持ちはわかります。忙しい経営者が制作物の仕様を細かく言語化する時間なんてない。だから「いい感じで」と伝える。悪気はまったくないんです。

で、多くの方がこう信じています。「腕のいい制作会社さえ見つければ、いい感じでと言えばいい感じのものが上がってくるはずだ」と。

正直に言うと、それは難しいです。

私たちもかつて、クライアントの「いい感じで」をそのまま受け取って作り始めたことがあります。結果、初稿で「なんか違う」が出て、3回修正して、お互い疲弊して、最終的に「まぁこれでいいか」で着地する。あの経験から学んだことが、この記事のすべてです。

たとえるなら、初めて会った人に「なんか美味しいもの食べたい」と言われるようなもの。おしゃれな店がいいのか、がっつり食べたいのか、予算感はどうか。聞かないとわからないことだらけなのに、「なんか」の一言に全部詰まっている。しかも初対面。好みもアレルギーも知らない。

Web制作の「いい感じで」は、まさにこれです。

制作物の「やり直し」が起きる本当の理由

初稿が上がってきて「なんか違う」と感じたとき、「制作会社を変えよう」と思う方がいます。

でも実は、制作会社の腕の問題じゃないことがほとんどです。

問題はもっと手前にあります。「誰に届けるのか」「どこに出すのか」「何を伝えたいのか」。この3つを、発注する側と作る側で擦り合わせないまま走り出している。だから初稿でズレる。修正してもまたズレる。

制作会社を替えても、伝え方が同じならまた同じことが起きます。

作る前に決めること — 私たちがやっている「擦り合わせ」

要件定義で握る4つのこと

私たちFluxxでは、制作に入る前に必ず「擦り合わせ」の時間を取ります。業界用語で言えば要件定義ですが、やっていることは難しくありません。

ターゲット。誰に届けたいのか。年齢層や職業だけでなく、その人が今どんな不安を抱えているか。ここがボヤけていると、デザインもコピーも全部ボヤけます。

配信面。リスティング広告に出すのか、ディスプレイなのか、リターゲティングなのか。同じバナーでも、出す場所で役割がまったく変わります。

訴求軸。価格で攻めるのか、手軽さで攻めるのか。正解がわからないときは「仮説を2つ立てて、両方作って検証する」というやり方をします。

判断基準これが一番見落とされがちです。何をもって「良いバナー」とするのか。クリック率なのか、問い合わせ数なのか。基準がなければ、出来上がったものを見て「いいんじゃないですかね」しか言えません。

この4つを30分かけて整理するだけで、修正の回数が劇的に減ります。

実例 — 寺院向けサービスのリタゲバナー

最近手がけた案件の話をします。寺院向けにホームページ制作を提供しているサービスで、リターゲティング用のバナーが必要になりました。

「バナーを3サイズ作ってほしい」。依頼はシンプルです。

でも、ここで「いい感じのバナー」を3サイズ作っても、たぶんクリックされません。住職にバナー広告でアプローチするってどういうことか、を先に考える必要がありました。

住職は50代〜70代が多く、ITに馴染みがない方がほとんど。「HP制作って高いんでしょ」「なんか難しそう」。この2つの壁が問い合わせを止めていると仮説を立てました。

そこで訴求軸を2つに分けて設計しました。「簡単・安心」で心理ハードルを下げるパターンと、価格を先に見せて不安を取り除くパターン。まずスクエアサイズで2パターン作り、反応を見てから3サイズに展開しました。

いきなり3サイズ×2パターン=6枚を作るのではなく、小さく試して広げる。このやり方だと「なんか違う」が起きにくい。起きても手戻りが小さいんです。

「バナーを作りたい」のか「顧客を獲得したい」のか

手段の前に目的を握る

擦り合わせの中で、私たちが一番気をつけていることがあります。

依頼の言葉を、そのまま受け取らないこと。

「リタゲバナーを作りたい」と言われたとき、本当にやりたいことはバナーを作ることじゃない場合がけっこうあります。顧客を増やしたい、問い合わせを増やしたい。バナーはそのための手段のひとつでしかない。

であれば、既存顧客へのメルマガのほうが費用対効果が高いかもしれない。新しいバナーより、LPの導線を見直すほうが先かもしれない。

これを聞かずにバナーを作り始めると、制作費も広告費もかけたのに「あれ、思ったほど成果出ないな」ということが起きます。バナーの品質のせいじゃなく、そもそもの打ち手が目的に合っていなかった、というケース。

「いい感じ」が通じるのは、あなたを知っているから

最後にひとつ。

「いい感じで」が通じる関係は、実際にあります。何年も一緒に仕事をしてきたパートナーなら、それで通じることもある。

でもそれは、その人のことを理解しているから通じているだけです。初めての関係で「いい感じで」は、正直かなりキツい。好みもビジョンも判断基準も、何も手がかりがない状態で作るのは、当てずっぽうと変わりません。

ひとつアドバイスがあります。もし「いい感じで」で済ませたいなら、日頃からSNSやブログで自社の考え方を発信しておくといいです。私たちは初回のミーティング前に、必ずクライアントのSNSや発信をチェックします。言葉にしていない部分を、そこから読み取ってMTGに臨みます。

「察してほしい」のコストは高いです。修正の往復、認識のズレ、やり直し。それを積み上げるくらいなら、最初に30分座って擦り合わせたほうがずっと安い。

バナー1本でも、LP1枚でも。「誰に・なぜ・何を」を一緒に考えてから作る。それだけで、制作物の精度は変わります。

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Author

中村 大睦

中村 大睦

Marketer

株式会社メディロムにて店舗運営から広報マーケティングまで幅広く従事。その後、ヘルステック企業にてオンライン診療事業のマーケティングを主導し、広告運用・LP改善・メディア連携を軸に集客基盤を構築。並行して大型スタートアップカンファレンスの集客・Web戦略にも携わる。