カスタマージャーニーをつくる前にやってほしいたったひとつのこと

カスタマージャーニーをつくる前にやってほしいたったひとつのこと

顧客分析

その「カスタマージャーニーマップ」、本当に施策に使えていますか?

「作成したカスタマージャーニーが、どうもしっくりこない」

マーケティング支援のご相談を受けるなかで、私たちFluxxが何度も聞いてきた言葉です。立派なフレームワークを使い、社内ワークショップまで開いて作り上げたジャーニーマップ。それでも数ヶ月後、施策には何ひとつ反映されていない。作る前と、ほとんど変わっていない。

実を言うと、私たち自身もこの失敗を経験しています。クライアントと丸一日かけて付箋を貼りまくり、最後は「完璧に整理できましたね」と盛り上がったジャーニーマップが、半年後に同じ会議室のホワイトボードの隅で埃をかぶっていた、ということがありました。

なぜでしょうか。

答えはとてもシンプルです。いきなりカスタマージャーニーを描いているからです。

「カスタマージャーニーを作ろう」と着手するときの多くは、まずパワーポイントを開きます。横軸に「認知 → 興味 → 比較 → 購入 → リピート」と書き出し、各段階で顧客が何を考え、どこで情報に触れるかを埋めていく。

順序立てて見えるので、それっぽく完成します。ただし、その出来上がったマップを見て、明日からの広告クリエイティブ・コンテンツ・営業トークを変えられるかというと、手が止まる。作っても動けないのです。

いきなりジャーニーを描くから、施策がブレる

なぜ動けないか。

ジャーニーの各段階に書かれている「顧客」が、誰なのか具体的に決まっていないからです。

「興味段階の顧客はSNSで情報収集する」と書いたとして、その「顧客」は40代の経営者なのか、25歳の独身女性なのか、30代の二児の母なのか。答えられないまま施策を考えると、出てくる打ち手はどれも当たり障りのない一般論になります。

ジャーニーは、誰の物語かが決まって初めて意味を持ちます。裏を返せば、「誰の」が決まっていない状態で描いたジャーニーは、施策には絶対に落ちません。

正しい順序は、プロファイリング → ペルソナ → ジャーニー

では、どの順序で作るべきか。

私たちFluxxがクライアントと一緒に走るときの順序は決まっています。

  1. プロファイリング(自社サービスが解決する課題を言語化する)
  2. ペルソナ作成(その課題を抱える「一人の人物」を解像度高く描く)
  3. カスタマージャーニー(その人物が、どこで何を感じ、どう動くかを描く)

順序を変えるだけで、ジャーニーは「使えるもの」に化けます。実際にどう進めるか、ステップごとに見ていきます。

Step 1: 自社サービスが「誰の」「何を」解決するのかを描く

最初にやるのは、市場調査でも競合分析でもありません。自社のサービスや商品が、「誰の」「何を」解決するために存在しているのかを言語化することです。

たとえばアパレルブランドなら、「20代後半の働く女性が、限られた予算の中で自分らしく見せたい、というジレンマを解決する」かもしれません。サービスの存在意義を、顧客の悩みの言葉に置き換える作業です。

「誰の何を解決しているか」を言葉にできない事業に、刺さるジャーニーは描けません。

Step 2: コミュニケーションターゲットを絞る

次に、その「誰の」をもっと具体的にしていきます。私たちはこれをコミュニケーションターゲットと呼んでいます。

最低限決めるのは、以下の6つです。

  • 性別
  • 年齢
  • 職業
  • 家族構成
  • 世帯年収
  • 居住エリア

「20〜40代の女性全般」では足りません。「26歳、独身、関東在住、年収400万円、IT企業勤務、一人暮らし」くらいまで絞ります。ここで「狭めすぎでは?」と感じるかもしれませんが、広く取った瞬間に、施策の解像度はゼロに近づきます

Step 3: その人の価値観を想像する

属性が決まったら、次はその人の意識や価値観を想像します。ここがプロファイリングの肝です。

具体的には4つの観点で想像を膨らませます。

  • 趣味(何が好きで、どんなブランドに馴染んでいるか)
  • お金に対する価値観(貯める派か、経験に使う派か)
  • 仕事に対する価値観(出世重視か、自分の時間重視か)
  • 自社サービスが関係する業界への価値観(コスメなら美容観、旅行代理店なら旅行観)

「想像」と書きましたが、適当でいいわけではありません。社内の営業やCSが日々接している顧客の声、SNSでの実際の投稿、過去の購入データ——使える材料は全部使って、解像度を上げていきます。

Step 4: 詳細なペルソナを言語化する

価値観まで描けたら、いよいよペルソナを一人の人物として書き起こします。箇条書きでも構いません。大事なのは、読んだ瞬間に「この人」が頭の中で動き始めることです。

例として、あるアパレルブランドのペルソナを書いてみます。

女性/25歳/関東在住/一人暮らし(交際相手あり)/年収400万円
趣味:小旅行(特に韓国)
服への価値観:安く高品質なものを組み合わせて自分らしさを出しつつ、コスパも出したいおしゃれ上級者。普段使いするのは、トレンド感とコスパを両立した大手通販系ブランド。アクセサリーへの関心も高く、プライベートでも指輪やブレスレットをよく身につける。

ここまで書けると、ジャーニーの各段階で「この人だったら何を見て、何を感じて、何を選ぶか」が具体的に描けるようになります。逆に、ここまで描けていないペルソナでジャーニーを書こうとすると、必ず筆が止まります。

Step 5: ここまできて、初めてジャーニーを書く

プロファイリングとペルソナがここまで仕上がってから、ようやくカスタマージャーニーに取り掛かります。

ジャーニー自体の作り方は、また別の機会に詳しくお話しします。一つだけお伝えしたいのは、ペルソナができていれば、ジャーニーは半分以上書けたようなものだということです。

ペルソナを飛ばしたジャーニーが「使われない」3つの理由

ここまで読まれた方なら、もうお気づきかもしれません。ペルソナを飛ばしたジャーニーが現場で使われない理由は、大きく3つあります。

1. 抽象的な階段で終わる

「認知」「興味」「比較」「購入」と並べた階段は、誰にとっても当てはまる代わりに、誰にも刺さりません。書けるのは「SNSで情報収集する」「比較サイトを見る」といった一般論までで、具体的な顧客像が立ち上がってこない。結果、「参考資料としては面白いね」で終わり、施策には使われない資料が1枚増えるだけです。

2. 明日の施策に落ちない

ジャーニーを描く本来の目的は、「明日から広告クリエイティブ・コンテンツ・営業トークをどう変えるか」を決めることです。ところがペルソナが曖昧なままだと、各段階で取るべき打ち手の粒度も曖昧になります。「興味段階で動画広告を強化する」まではなんとか書けても、「どんな表情の人が、どんな一言にハッとするのか」まで設計できない。結局、動画広告の中身は制作担当者の勘に任される、いつものパターンに戻ります。

3. チームで合意形成できない

ペルソナが揃っていないと、ジャーニーの解釈は見る人ごとに変わります。マーケは「20代後半の独身女性向け」のつもりで描いたジャーニーを、営業は「30代の主婦向け」と解釈する。社長は「男女問わず」と受け取る。誰も間違っていないのに、施策のアウトプットはバラバラになります。一人のペルソナが共有されていないジャーニーは、チームの会話を揃える機能を果たしません。

まとめ ── 順序を変えるだけで、ジャーニーは「使えるもの」になる

もう一度おさらいします。カスタマージャーニーを「使えるもの」に変えるのに、特別な理論もツールもいりません。必要なのは順序だけです

  1. 自社が「誰の、何を」解決しているのかを言語化する
  2. コミュニケーションターゲットを6項目で絞る
  3. その人の価値観を4つの観点で想像する
  4. 詳細なペルソナを一人の人物として書き起こす
  5. ここまで終えてから、ジャーニーを描きはじめる

逆に、この順序を飛ばして先にジャーニーを描き始めた瞬間に、マップは「会議で使わない資料」になる運命をたどります。時間もコストも、何より現場の熱量もロスしてしまう。もったいない話です。

「自社でもジャーニーを作ったけれど、うまく使えていない」と感じている方は、いったんジャーニーから離れて、ペルソナの書き直しから始めてみてください。順序を戻すだけで、同じ時間・同じメンバーで作っても、出てくるマップの質が変わります。

私たちFluxxが提供するFluxx Growth Partner(FGP)では、この「プロファイリング → ペルソナ → ジャーニー」の順序を、クライアントの事業に合わせて一緒に走るマーケティング伴走支援を行っています。自社だけで進めるのが難しい、社内のチームで解釈が揃わない、という場合は、お気軽にご相談ください。

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Author

竹内 亮太

竹内 亮太

Marketer

大学卒業後、株式会社マクロミルに入社。3年間リサーチャーとして消費者データの分析に従事。マクロミル在籍中に大手広告代理店へ出向し、TV/WEB広告などの複数媒体の効果検証をメインで担当する。その後、CDPベンダーへアナリストとしてjoinし、耐久消費財を軸とした幅広いテーマでの分析を行う。

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