要件定義を、お願いしない制作|「いい感じで」から初稿を当てるFluxxの5つの仕込み

要件定義を、お願いしない制作|「いい感じで」から初稿を当てるFluxxの5つの仕込み

マーケティング

「いい感じで」の続きを、もう一歩だけ

先日このブログで、「いい感じで」と発注する前にしておくべき4つのことという記事を書きました。ターゲット・配信面・訴求軸・判断基準を先に握っておくほど、制作物の精度が上がりますよ、という話です。

ただ、書き終えたあとに少しだけ引っかかっていたことがあります。

あの記事の結論を素直に受け取ると、「発注する側が要件定義を学ぶ必要がある」と読めてしまうかもしれない、と。

ほんとうに、発注される方が要件定義の作法を学ばなければいけないのでしょうか。

経営者の方のお時間は、すでにびっしり詰まっています。広告運用も、採用も、財務も、ご自身の事業判断もある中で、制作会社とのすり合わせに時間を割くのは、なかなか骨が折れるものです。正直に言えば、制作の要件定義は経営者の仕事ではないと、私たちは思っています。

だから私たちFluxxは、こう考えることにしました。

擦り合わせが必要なのは事実。ただ、その負担は制作側が引き受けるものだ、と。

この記事では、Fluxxが普段の制作の中で「擦り合わせの負担を引き受ける」ためにやっている5つの仕込みを、実際の案件のお話も交えながら、ひとつずつご紹介させてください。

目的の問い直しは、私たちから始めます

「バナーを作りたいんです」とご相談をいただいたとき、私たちは最初にバナーの話をしません。

先にお伺いするのは、バナーの先にある目的のほうです。

「この施策で、最終的に何が増えていたら成功ですか」
「お客様のどの行動が変わったら嬉しいですか」
「3ヶ月後に振り返ったとき、どの数字を見ますか」

こうした問い直しは、発注する側の宿題ではなく、私たちの仕事だと捉えています。「何を作るか」の前に、「なぜ作るか」を一緒に言語化する。ご依頼いただいた言葉そのままで作り始めるのではなく、目的から逆算して最適な手段を選び直す。これは、私たちの仕事の入口だと考えています。

たとえば先日、永代供養墓を運営されているお寺さまからLP制作のご相談をいただきました。最初は「手元のパンフレットをLPに起こしてほしい」というお話だったのですが、お話を伺っていくうちに、本当に増やしたかったのは「見学のご予約」であることがわかってきました。

それならば、LPの骨格もビジュアルも、「見学にお越しいただきたくなる導線」を軸に組み直したほうが効きます。結果的に、パンフレットの再構成ではなく、お問い合わせから見学までのご体験を想像させるLPとしてお戻ししました。ご依頼の言葉そのまま作り始めていたら、目的から少しズレたものをお納めしていたかもしれません。

過去案件のナレッジを、初稿のベースに乗せる

Fluxxでは、供養・医療・歯科・ヘルステック・不動産・BtoB SaaSなど、業界ごとの制作知見を社内データベースに蓄積しています。

新しいご相談をいただいたとき、私たちはまず「似た業界、似た課題の案件で、何が効いて、何が効かなかったか」を社内から拾いにいきます。業界の空気感を知った状態で初稿を組むのと、ゼロから考えるのとでは、初手の確度が大きく変わります。

出発点に業界知見が乗っているかどうかだけで、擦り合わせに必要な往復の回数がぐっと減ります。

先ほどの永代供養墓のLP制作では、過去にお手伝いした寺院向けのリスティング広告運用で得ていた、「住職の方やご家族世代がネット広告にどういう印象を抱きやすいか」というナレッジが効きました。「この言葉は少し軽く感じられるかもしれない」「この色味は派手に映る気がする」といった肌感覚は、業界を一度経験していないとなかなか持てないものです。

もちろん、過去案件のコピーをお持ちするわけではありません。その会社の言葉、その事業のフェーズ、そのタイミングのお客様の気持ちに合わせて、毎回組み直します。ただ、ゼロから擦り合わせで掴みにいくと2〜3往復かかる論点が、最初から初稿に織り込まれている状態を作れる。その差を埋める労力を、発注される方に背負っていただかなくて済む。それがナレッジを蓄積する本当の理由です。

方向性の違う2案を、セットでお戻しする

制作で手戻りが起きやすいのは、1案だけを持っていって、それがハマらなかったときです。

私たちもかつて、自信を持ってお出しした1案が、お客様のイメージと少しズレていた、ということがありました。そのあとに「じゃあ逆の方向でもう1案」とお戻ししても、すでに最初の印象が残っているので、フラットには比べていただけません。お互いにぐっと疲れる進行になります。

そこでいまは、方向性の異なるデザインA案・B案をセットでお戻しすることを基本にしています。A案は手堅く、B案は少し攻めて、といった具合に意図を変える。

1案で当てにいくのではなく、幅を広げてから収束させる。

先ほどの永代供養墓のLPでも、A案は由緒や歴史を前面に出した信頼感重視、B案はご供養後のご家族の安心感まで描いた情緒重視と、まったく異なる方向性の2案でお戻ししました。先方でお話し合いいただくうちに、A案の骨格にB案の情緒を少し乗せた三案目が自然と立ち上がり、そこから収束していきました。1案で当てにいっていたら、ここまで辿り着けていません。

お戻しする前に、社内の別の目を必ず通す

制作担当者は、どうしても案件に近くなりすぎて、見えなくなる視点があります。そこに別の角度の目を入れるために、初稿をそのままお戻しすることはしていません。

案件に関わっていないメンバーが、お戻しする前に必ず一度目を通します。ターゲットに対して適切な訴求になっているか。初見で理解できる情報設計になっているか。Fluxxとして自信を持ってお戻しできる品質か。

たとえば歯科医院さまのサイトリニューアルでは、案件担当が当たり前に思っていた診療メニューの並び順について、案件外のメンバーから「はじめて訪れる患者さまには、症状別のほうが選びやすいのでは」という指摘が上がってきました。お戻しの前に並び順を組み替え、クライアントとの打ち合わせでは、細かな情報設計の話ではなく、リニューアル後の集患の話に時間をしっかり使えるようになりました。

クライアントのお時間を使って気づくべきではないことに、私たちが先に気づいておく。社内レビューは、Fluxxの制作プロセスの中でもとくに大事にしている工程です。

AIを使って、決めるべき論点だけをお渡しする

それでも、発注される方にしか決められない論点は、どうしても残ります。ブランドのトーン、ターゲットの優先順位、予算の割り振り。ここは、私たちが代わりに決めるわけにはいきません。

そこで、私たちはClaude CodeなどのAIツールを使って、過去のやり取りや業界ナレッジから「この案件で握っておくべき論点」を自動で抽出し、整理した状態でお渡ししています。

永代供養墓のLPでも、初回のミーティング前に「ご遺族との温度感をどこまで描くか」「費用の提示順序」「写真に人物を入れるかどうか」といった、判断が分かれそうな論点をAIで洗い出し、1枚のシートに整理してお渡ししました。おかげで打ち合わせでは、背景の説明や選択肢の羅列に時間を取られず、発注される方は「何を決めるか」だけに集中していただけます。

決めるための材料集めや、論点の洗い出し、過去事例との比較は、こちらで済ませておく。これが、「擦り合わせの負担を私たちが引き受ける」ということの、いちばん具体的な形です。

「いい感じで」は、信頼の裏返し

「いい感じで作ってください」という一言は、そこまで細かく指定しなくても、いいものが出てくるだろうという信頼の表れだと、私たちは受け取っています。

その信頼にきちんと応えるには、お客様に要件定義の宿題をお出しするのではなく、私たち制作側の仕組みで初稿の精度を上げていくしかありません。擦り合わせが大事なのは、いまも変わりません。ただ、その擦り合わせの負担を、お客様にお預けしない。それがFluxxの制作プロセスの軸になっています。

「バナー、いい感じで作ってもらえますか」と、お気軽にお声がけください。その一言を受け取ったあとの仕込みこそが、私たちの仕事だと思っています。

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Author

中村 大睦

中村 大睦

Marketer

株式会社メディロムにて店舗運営から広報マーケティングまで幅広く従事。その後、ヘルステック企業にてオンライン診療事業のマーケティングを主導し、広告運用・LP改善・メディア連携を軸に集客基盤を構築。並行して大型スタートアップカンファレンスの集客・Web戦略にも携わる。

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