経営者・ディレクターのためのClaude Code常時稼働|VPSより先に、手元PCを24時間起動にする理由【シリーズ第2回】
前回は、チャットのClaude、アプリのClaude Desktop、ターミナルのClaude Codeという入り口の使い分けについて書きました。今回はその続きとして、Claude Codeを人がいない時間も動かし続けるための土台の話です。
Claude CodeのようなAIエージェントを触り始めると、思ったより早くある壁にぶつかります。指示を出している間はうまく動く。でもPCを閉じた瞬間、あるいは寝ている間、エージェントは何もしてくれません。
「常時稼働させたい」と思った瞬間、多くの人がまず検索するのがVPSとDockerです。エンジニアに聞けばだいたい同じ答えが返ってきますし、記事もたくさん出てきます。ただ、非エンジニアの経営者やディレクターがこの2つに手を出すのは、正直あまりおすすめしません。答えはもっと手前にあります。手元のMacやPCを24時間起動にして、そこをエージェントの母艦にする、というやり方です。
VPSやDockerを勧めない理由
VPSとDockerが技術的に優れていることは間違いありません。問題は、それを維持する人が誰かということです。
契約したVPSにSSHで入り、Linuxのコマンドで環境を整え、Dockerコンテナを立ち上げる。ここまでは初期設定を1回乗り切れば済みます。厄介なのはその後です。OSのアップデート通知、コンテナのバージョン更新、ポートが塞がって外から繋がらなくなる不具合。こうしたことは月に数回、忘れた頃にやってきます。
たとえばコンテナが更新エラーで止まり、エージェントが夜のうちに動かなくなっていたとします。翌朝Slackを見ても返信がない。SSHで入ってログを見ても、何が原因か非エンジニアには判断がつかない。誰かに聞かなければ直せない状態で、業務は止まったままです。この「止まったときに自分で直せない」が、VPS・Dockerの一番の落とし穴だと考えています。
手元PC常時起動のメリット
一方、手元のPCを常時起動にするアプローチは、いくつかの点でシンプルです。
まず、今日から始められます。新しい契約もSSHの学習も要りません。今使っているMacの設定を1つ変えるだけで、エージェントは動き始めます。
画面が見えることも地味に効きます。エージェントが今何をしているか、ターミナルのタブを開けばそのまま分かります。VPS上のプロセスをログだけで追うのとは違い、直感的に状況を把握できます。
すでに使っているブラウザのログイン状態や、インストール済みのアプリもそのまま資産として使えます。VPS側でゼロから環境を作り直す必要がありません。
そして何より、失敗してもやり直しが利きます。設定を間違えたら元に戻せばいい。壊れたら再起動すればいい。この気軽さは、非エンジニアが自分の手で運用を続けるうえでかなり大きな要素です。
具体的なやり方(Macを例に)
やることは4つです。
1つ目は、スリープさせない設定です。システム設定の「バッテリー」または「エネルギー」から、ディスプレイオフ後もスリープしない設定にします。ターミナルから一時的にスリープを止めたいだけなら、次のコマンド1つで十分です。
caffeinate -s
2つ目は、電源が落ちたときに自動で起動し直す設定です。「システム設定 > 一般 > 起動状況」あたりに、停電やブレーカー落ちの後に自動起動する項目があります。ここをオンにしておくだけで、地震や停電のあとに誰かが自宅に駆けつける事態を避けられます。
3つ目は、外出先から様子を見る仕組みです。Tailscaleのような自宅・社外のPCを安全につなぐVPNアプリを1つ入れておくと、出先のスマホからでも自宅のMacの画面を確認できます。ポート開放やルーターの設定をいじる必要はありません。
4つ目が、cron(クロン)と呼ばれる、決まった時刻に決まった作業を自動で走らせる仕組みです。PCに昔からある機能で、「毎日この時刻にこの処理を動かす」という時間割を組めます。24時間起動のPCとcronを組み合わせると、業務の時間割そのものを自動化できます。たとえば夜中のうちにデータを集め、明け方に分析にかけ、出社する時刻にはSlackにレポートが届いている、という流れを1晩で完結させられます。
文法を覚える必要はありません。AIエージェントに「毎朝8時にこの処理を実行して」と頼めば、cronの設定自体はエージェントが書いてくれます。読者側がやることは、時間割を決めて言葉で伝えることだけです。
Fluxxでも実際にこの構成で動かしています。Slack連携の常駐プロセスがメンションを検知してエージェントのセッションを立ち上げ、夜間から朝にかけてはcronがデータ収集・分析・通知のジョブを時間帯を分けて回します。経営者側がやることは、Slackで依頼を投げて、承認が必要な操作だけ差し戻しに答える。それだけです。
常時起動PCの前に試せる、Cloudルーチン
ここまでVPSより手元PCを勧めてきましたが、24時間起動のPCが無くても始められる自動化もあります。前回触れたとおり、Claude DesktopにはCloudルーチンという、アプリを閉じていてもクラウド側で動き続ける予約実行の機能があります。「毎朝この情報を調べて報告して」というような、調べて返すだけの定期タスクなら、手元のPCを立ち上げっぱなしにしなくても、このCloudルーチンだけで動かせます。
ただしCloudルーチンは、手元の資産には触れません。ブラウザのログイン状態、ローカルに置いてあるファイルやツール、社内システムへの接続といったものは、クラウド上のエージェントからは見えない場所にあります。経理ソフトの操作やブラウザ経由の作業、ローカルにインストールしたツールと連携するような、自分の環境そのものを使う自動化には、常時起動のPCと、ターミナルで動くClaude Codeが必要になります。
段階を踏むなら、まずはClaude DesktopのCloudルーチンで小さく試して、業務の勘所が掴めてきたら常時起動PCとClaude Codeに移す、という順番がちょうどいいと思います。
決まりきった処理は、AIに毎回頼まない
毎回まったく同じ処理を同じ手順で回すだけの作業、たとえば決まった時刻に決まったURLからデータを取ってきて記録するだけ、といった処理は、AIエージェントに都度判断させる必要がありません。手順が固定されているなら、その手順をそのまま機械的に走らせる仕組みに任せたほうが速く、コストも安く済みます。手元PCなら、先に触れたcronがその役割を担います。
PCを起動し続けない前提で同じことをしたい場合は、GitHub Actionsのようなサービスもあります。PCを立ち上げっぱなしにしなくても、固定のスクリプトを決まった時刻に走らせておける置き場、というくらいの位置づけです。
決まりきった処理は固定の仕組みに任せ、判断が必要なところだけAIエージェントに渡す。この線引きが、運用コストを大きく左右します。
電気代・セキュリティ・寿命の目安
まず電気代です。M系チップのMac miniクラスであれば、常時稼働させても月数百円から千円台というのが一般的な目安です。正確な実測値を持っているわけではないので、あくまで目安として捉えてください。負荷の高い処理を何時間も回し続けるような使い方でなければ、業務コストとして無視できる範囲に収まることが多いはずです。
セキュリティは、最低限3つ守れば十分です。OSを最新に保つこと、ログインパスワードを使い回さないこと、外部からのアクセスはVPN経由に限定してポートを直接開放しないこと。この3つを守っていれば、個人利用のPCとして許容できる水準は確保できます。
ファンの音や寿命を気にする声もありますが、常時起動といってもエージェントが実際に処理をしているのは1日のうち一部の時間です。待機中はファンもほとんど回りません。数年単位の耐久性まで踏み込んだデータは持ち合わせていませんが、業務用PCを日中ずっと開きっぱなしにしているのとそう変わらない使い方だと捉えています。
どこからVPSを検討すべきか
手元PCで十分なのは、あくまで「自分たちの業務のためにエージェントを動かす」範囲までです。線引きの目安は3つあります。
- 社外のユーザーに向けて公開するWebサービスとして提供する場合
- 複数人でチームとして共有する基盤にする場合
- 止まったら売上や信用に直結するレベルの可用性が求められる場合
このどれかに当てはまったら、そこから先はVPSやクラウドの領域です。逆に言えば、それまでは手元のPC1台で十分に戦えます。
まとめ
AIエージェントを常時動かすための最初の一歩は、サーバーを借りることではありません。今使っているMacの設定を数分いじるだけで、明日からエージェントは働き始めます。
次回は、実際にfreeeの経理業務を自動化した実例を、AI向けの再現ガイドとあわせてお届けします。まずは手元のPCをスリープさせないところから始めてみてください。
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